◆王子の狐の話しって・・・

▼王子の狐(あらすじ)
ある男が王子の原で狐が若い娘に化けるのを見かけたそうです。この狐、誰を化かすのだろうと思い周りを見渡すと自分ぐらいしかいないことに気づきました。どうせ化かされるくらいだったら、こちらから出向いて逆に化かしてやろうと算段しました。そうして男はその化け狐の娘に「お玉ちゃん」と、声を掛けて料理屋「扇屋」に入りました(現在の王子駅の裏手あたり)。

二階の部屋に上がり込み上座に座らせました。狐の好物、天ぷらを注文し男は刺身と酒を頼んで、娘と差しつ差されつしているとお玉ちゃんは安心して酔いつぶれてしまいました。床の間を枕に寝込んでしまったのです。それを見計らった男は、お土産の卵焼きをもらって、そそくさと部屋を出て扇屋を後にしました。どのくらい寝込んだのか、お玉ちゃんを起こしに来た女中が「お連れはもう帰ってしまったし、お勘定はあなた様からもらえ」と言われたと告げると、お玉ちゃんはビックリして尻尾を出してしまいます。

それを見た女中はもっと驚いて、階段を股が裂けるほどの勢いで飛び降りてご注進。皆で二階に上がって見ると狐が考え込んでいる様子。部屋の狐を懲らしめてやろうと棒きれを持って飛び込むと、狐は必死に逃げ回り追いつめられると、「狐の最後っぺ」を発射して這々の体で逃げ延びました。

そこに主人が帰って来た。この話を聞いて、「お稲荷さんのお使いになんてことをしたんだ、誰のお陰でこの店があると思うんだ、厄払いにお稲荷さんにお詫びに行くぞ」。

話は変わって、化かした男は友達の家に扇屋の卵焼きをお土産に持って行き、事の次第を話すと友人は「狐は執念深い。そんな祟りのある物は貰えない」と脅かして男を追い払いました。男は家に帰ってきたのだが家族に異変はなく、祟りも何事もなかったので一安心しました。

翌日、謝りに狐と会った所に手土産を持って訪ねると、子狐が遊んでいた。子狐に事情を話し、お詫びの印だと土産を渡しました。散々いじめられて苦しんでいる母狐に、今人間がきて謝りながらこれを置いていったと渡すと「人間は執念深いんだよね」と警戒しながら開けてみると、美味しそうなぼた餅が出てきました。子狐は盛んに欲しがるが、母狐は「いけないよ。馬の糞かもしれない」と・・・。

※王子の狐はよく人を化かすというのが有名だったそうです(笑)。

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▼扇屋
扇屋(北区岸町1-1-7)

扇屋は慶安元年(1648)三代将軍家光の時代に初代弥左衛門が農業のかたわら掛け茶屋をしていたのが始まり。江戸時代になると文人墨客の筆や「江戸名所図絵」「江戸砂子」江戸土産、錦絵などに書かれました。「寝ぬ夜のすさび」と云う古書に料理屋の折り詰めは扇屋より始まれりと書かれており、扇屋名物玉子の釜焼き折り詰めに江戸時代のこと故、硫黄の付いた「つけ木」をさし添えて狐に化かされないまじないにしたと云うことです。明治天皇が休息に二度の来店をしたといいます。

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明治時代の王子「扇屋」

 

昔のたたずまいというか風情が残っていないのは残念ですが、確かにそこに歴史有りとは感じるところです。

 

ではでは・・・。